バーチャルオフィスを利用できない業種とは?起業前に知っておくべき事務所規定と認可要件
起業の際、活動の拠点として自宅を使うか、賃貸の事務所を用意するかは別としても、場所の確保は必須です。
公的機関に開業の届けや開業のための認可申請する場合にも、また、顧客や取引先への信頼を確立するためにも事業所の住所は不可欠となります。
しかし、賃貸事務所を構えることは多額の資金やランニングコストを伴い、起業時の大きなハードルになりがちです。
事業が軌道に乗るまでは事務所といった業績に直接寄与しない事項への投資は最小限に抑えたいものです。
このような状況に置いて、僅かな費用で住所を利用できるバーチャルオフィスは多くの起業家にとって魅力的な選択肢となります。
しかしながら、業種によっては事務所規定や管轄する法律、許認可の要件により、バーチャルオフィスの利用が認められておりません。
ここでは、バーチャルオフィスが利用できない、または利用が難しいとされる主な業種と、その理由について詳しく解説いたします。
これらの業種の開業を計画している方は、バーチャルオフィス以外の選択肢を考慮して開業計画を立てる必要があります。

実態のある事務所や独立したスペースの設置が義務付けられている業種
多くの業種では、許認可の取得や業務遂行のために、物理的な場所を伴う事務所の確保が不可欠とされております。
① 士業(税理士、援護し、司法書士、弁理士など)
規制理由:これらの士業は、顧客の機密情報を扱う性質上、独立した執務スペースや書類の施錠管理、郵便物の確実な受領などの要件が厳しく求められます。
要件:各士業の協会への登録要件においても実態のある事務所の設置が必須とされております。
代替案:規定を満たせば、レンタルオフィスであれば可能な場合があります。
➁ 職業紹介業・人材派遣業
規制理由:厚生労働大臣の許可が必要であり、利用者相互の秘密保持のための動線やプライバシー保護が求められるため、実態のある事務所が必要です。
要件
職業紹介業:事務所の面積制限はが廃止されました。
人材派遣業:利用者相互の秘密保持のため20平方メートル以上の面積制限があります。
代替案:職業紹介業の場合は規定を満たせばレンタルオフィスの利用が可能な場合がある。
③ 建設業
規制理由:請負契約の締結をする事務所に、建設業の許可証の掲示義務や工事の適切な管理を行うための専任技術者の常駐が求められます。
要件:これらの要件を満たすためには実態のある事務所が必要です。
④ 不動産業(宅地建物取引業)
規制理由:事務所内に、国土交通省令で定める業者票や国土交通大臣の定めた報酬額表の提示義務があり、更に従業員名簿や帳簿の備え付け義務があるため。
要件:これらの提示物や書類の保管には実態のある事務所が不可欠です。
代替案:規定を満たせばレンタルオフィスであれば可能な場合がある。
⑤ 古物商(中古販売、リサイクルショップ)
規制理由:公安委員会の許可が必要であり、盗品の流通防止の観点から、、事務所に古物台帳の保存が義務付けられています。。
要件:古物台帳は、不正防止のため警察官などからの開示要請がある場合があり常にその対応が必要なため実態のある事務所での保管が求められております。
代替案:条件を満たせばレンタルオフィスであれば可能な場合があります。
⑥ 探偵業
規制理由:公安委員会よりの「探偵業届出免許証」を事務所に提示する義務があります。
要件:物理的な提示義務があるため、実態のある事務所が必要です。
⑦ 金融商品取引業
規制理由:管轄の財務局への届出が必須であり、事業所の図面や賃貸契約書の提示が求められます。
要件:実態のある事務所や物理的なセキュリティ対策が講じられた場所が求められます。
⑧ 訪問介護業
規制理由:介護保険法により、法人であること、人員基準を満たしていること、また、法令による支援加算の要件として職場環境要件があります。
従業員が業務を遂行するうえで遵守すべきルールや行動規範を具体的に示すために実態のある事務所が必要です。
要件:利用者との相談スペースやサービス提供責任者の執務スペースなど、具体的な活動場所が必要です。
⑨ クリーニング業
規制理由:クリーニング業法、クリーニング業法施行規則、各都道府県市町村の条例により厳しい規定があります。
公衆衛生の観点から、施設の構造や衛生管理体制が重要視されます。
要件:開業の際、管轄する保健所に「開設届」を提出し、構造設備が基準に適合しているか確認検査を受ける必要があります。
検査確認済証の交付を受けなければ営業できません。
この届け出には、洗濯作業を行う場所(クリーニング所)だけでなく、一般の事務所スペースも含まれます。
クリーニング所にはクリーニング師の設置が義務付けられ、また営業内容に関する帳簿の備え付けも義務化されております。
⑩ 廃棄物処理業
規制理由:廃棄物を適切に処理する施設や能力を維持する必要があるため、実態のある事務所や関連施設が求められております。
要件:廃棄物処理業は「廃棄物処理法」を初めとする多くの法令や条例により厳しく規制されております。これらの法令で事業所の所在地、施設の基準、保管場所、人員配置などについて詳細な規定が設けられていることからこれらの法的要件を満たしていることを明確に示すため実態のある事務所が必要になります。
【重要なヒント】レンタルオフィスの可能性
これらの業種では、許認可の取得や業務遂行のために物理的な場所を伴う事務所の確保が不可欠とされておりますことから、これらの業種の開業を計画する場合は事務所規定などを事前に調べて開業計画や資金計画を作成する必要があります。
上記の業種の中でも、バーチャルオフィスでは事務所として認められないが、専用スペースを持つレンタルオフィスあれば、条件を満たすことにより事務所として認められるものもありますので、認可機関などに問い合わせて見ることも必要です。
規約などには、バーチャルオフィスではだめであるがレンタルオフィスに関してはその記載がない場合が多いので、状況を説明して規制の趣旨に沿っているようであれば認められる可能性もありますのでチャレンジしてみる価値はあるかと思います。
レンタルオフィスは、会議室や共有設備を利用できる利便性もありながら、バーチャルオフィスほどではないが賃貸事務所と比べてもかなり低コストで個別に独立した占有スペースを確保できることから、上記の業種の中でも許認可要件を満たす可能性のものもあります。
起業に際して、低コストで住所利用ができるということは、起業のハードルを低くし、事業の成功の可能性を増大させます。しかし、上記で説明いたしましたようにバーチャルオフィスによる住所利用は認められない業種がたくさんありますので、計画の段階で規制当局との確認が必要になります。
バーチャルオフィスとレンタルオフィスの違いを下記記事にて詳細に解説しておりますので気になる方は下記記事もご覧ください。